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研究紹介

薬剤


■ インフルエンザ薬 タミフルで異常行動死 少年2人

 インフルエンザ治療薬のリン酸オセルタミビル(商品名タミフル)を飲んだ患者2人が、飲んで間もなく行動に異常をきたし、1人は車道に走り出て大型トラックに はねられ死亡、もう1人はマンションの9階から転落死していたことが11日、分かった。薬の添付文書には副作用として「異常行動」(自分の意思とは思えない行動) や「幻覚」などが起きる場合があると書かれているが、死亡につながったケースの判明は初めて。厚生労働省安全対策課も死亡例の一つを副作用として把握しており 「異常行動の結果、事故死する可能性もある」としている。

 NPO法人「医薬ビジランスセンター」(大阪市)理事長の浜六郎医師が12日、津市で開催中の日本小児感染症学会で発表 する。2人の遺族が浜医師に相談した。
 岐阜県の男子高校生(当時17歳)は昨年2月にインフルエンザと診断され、正午過ぎにタミフルの通常量、1カプセルを自宅で飲んだ。その後、家族が不在の間に パジャマ姿で素足のまま外出し、雪の中を自宅のフェンスを乗り越えて走るなどした。午後3時45分ごろ自宅近くでガードレールを乗り越え大型トラックに飛び込み 死亡した。
 タミフルの輸入販売元の中外製薬は同年7月、「薬との因果関係が否定できない例」として厚生労働省に報告した。
 愛知県の男子中学生(当時14歳)は今年2月5日にインフルエンザと診断された。午後4時ごろに1カプセルを飲み、午後5時半ごろ自室に戻った。午後6時ごろ、自宅 マンションの前で全身を打って倒れているのが見つかり、そのまま死亡した。警察によると9階の手すりに指紋が残り、手すりにぶら下がった後に落ちたとみられる。
 2人とも、薬を飲む前に精神的な異常は全くなかったという。
 この他にも10代の女性が服用後2日目に窓から飛び降りようとして母親に止められた例があり、厚労省は昨年6月に「医薬品・医療用具等安全性情報」を出し注意を 呼びかけた。添付文書に副作用として異常行動を盛り込むことも指示した。
 同省関連の独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」には、00〜04年度に、服用後の幻覚や異常行動などが延べ64件報告されている。
 奥西秀樹・島根大医学部教授(薬理学)は「脳内には興奮を抑える仕組みがあるが、タミフルはこの仕組みをさらに抑え異常な興奮などを起こすのではないか」と推定 する。未成年者や乳幼児は化学物質から脳を守る機構が弱く、特にこうした副作用を受けやすい。他に幼児6人が服用後に突然死しており、同様の副作用と疑われると いう。
 タミフルはスイス・ロシュ社が開発した。ウイルスの増殖を妨げ熱がある期間を1日程度縮める効果がある。国立感染症研究所の医師によると日本での年間販売量は 1500万人分で、世界の8割以上を占める。
 欧米では、インフルエンザは自然に回復する病気とみられている。浜医師は「飲んだ場合は副作用を頭に入れ、周囲の人が目を離さない方がよい」と話している。 【中川紗矢子、高木昭午】

 ◆母「息子 自殺じゃない」
 「あの子は自分で死んだんじゃない。野球部のエースを目指してがんばっていたのに」
 インフルエンザ治療薬「タミフル」を飲んだ少年2人の異常行動死が明らかになった。そのうちの一人、今年2月5日に死亡した愛知県内の男子中学生(当時14歳) の母(45)は毎日新聞の取材に、最愛の息子の死の真相を明らかにしたいという胸の内を語った。
 中学生は小学4年生のころから野球に打ち込み、1月には学校の野球部でエース候補に選ばれて張り切っていた。2月半ばには、動物病院を訪問して職場体験をさせて もらう予定で、楽しみにしていたという。
 だが、おかゆを食べてタミフルを飲んで寝た後の2月5日午後6時ごろ、自宅マンションの前に素足で倒れているのが見つかり、そのまま死亡した。警察の調べでは、 9階の手すりを越えて転落したとみられた。
 母親は警察や病院から何度も「何か悩んでいなかったか」と自殺を疑うかのように尋ねられた。だが、心当たりはない。息子の友人も教師も「自殺するような子じゃ ない」と励ましてくれるが、なぜ死んだのか、母親にも確証はなかった。
 タミフルとの関連性を疑うようになったのは葬儀後のことだ。近所の女性に「タミフルではないのか。自分も飲んだ時、すごくつらくて倒れた」と言われたのがきっかけ だった。
 母親はインターネットでタミフルの副作用状況を調べた。掲示板に「息子がタミフル服用後に突然、マンションから落ちて死んでしまった。何で死んだのか分からない」 と書き込んだ。反応はすぐ来た。「タミフルを飲むと、いろんな症状が出るようですよ」
 母親は情報を寄せてくれた一人の「医薬ビジランスセンター」の浜六郎理事長に詳しく状況を知らせた。
 母親は「病院はこういう副作用があることを一言も言わなかった。同じような子が他にもいるのではないか。せめて、タミフルを飲ませた後は、子どもを監視するよう に伝えてほしい」と語った。【中川紗矢子】

毎日新聞 2005年11月12日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20051112k0000m040160000c.html



■ ソリブジン薬禍とパンフレット
cf. 荒井千暁 『漂流する現代医療――現役医師がみた“医療不信”』 同友館



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