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研究紹介

サイボーグ
cyborg


■ 参考文献
Andrews, Lori and Nelkin, Dorothy 2001 BODY BAZAAR Random House, inc., New York = 2002 野田亮・野田洋子訳『人体市場――商品化される臓器・細胞 ・DNA』岩波書店
Chorost, Michael 2005 Rebuilt: How Becoming Part Computer Made Me More Human Houghton Mifflin =2006 椿正晴訳『サイボーグとして生きる』ソフト バンククリエイティブ
Haraway, Donna J. 1991 Simians, Cyborgs, and Women The Reinvention of Nature  London: Free Association Books and New York: Routledge =2000 高橋さきの訳 『猿と女とサイボーグ――自然の再発明』青土社
市野川容孝松原洋子 2000「病と健康のテクノロジー」 『現代思想』28-10(2000-9)pp76-96 → 松原・小泉編[2005:47-87]
川口有美子 2004「人工呼吸器の人間的な利用」『現代思想』32-14(2004-11)pp57-77
小泉義之 2003『生殖の哲学』河出書房新社
小泉義之 2006『病いの哲学』ちくま新書
松原洋子小泉義之編 2004『生命の臨界――争点として の生命』人文書院
Nancy, Jean-Luc 1992 Corpus Edition Metailie =1996 大西雅一郎訳『共同−体 (コルプス)』松籟社
Nancy, Jean-Luc 2000 L'INTRUS Editions Galilee =2000 西谷修訳『侵入者――いま 〈生命〉はどこに?』以文社
杉田俊介 2006「自立と倫理――カントとともにある『寄生獣』、『寄生獣』によるカント」『現代思想』34-14(2006-12)pp152-170
高橋透 2006『サイボーグ・エシックス』水声社
立岩真也 2004『ALS――不動の身体と息する機械』医学書院



■人間がハッキングされる日?

 アニメ「攻殻機動隊」シリーズに、「電脳」と呼ばれる人たちが登場するのをご存じだろうか。脳を直接コンピューターなどにアクセスできるよう改造すること、 そしてそういうふうに改造された人間を言う。少し前だったら、「それはSFの話」で済まされていたが、いまや、かなり現実味を帯びてきた。

サイボーグ科学者
 「サイボーグ科学者」として知られる英レディング大学のケビン・ワーウィック教授が先ごろ、ロンドンで講演を行い、「人間は将来、サイボーグ化し、コンピューター ウイルスに悩まされるだろう」と述べた。ネットワークに接続する機能を体内に埋め込むことで、現在のコンピューターと同じように、ウイルスとセキュリティの問題が 持ち上がってくるというのだ。
 ワーウィック教授は、サイバネティクスを専門とする科学者だが、それよりも、自らがサイボーグであることで有名だ。1998年、ガラスのカプセル(直径約3ミリ、長さ 約25ミリ)入りのチップを外科手術で腕のなかに埋め込んで、“世界初のチップ埋め込み人間”となった人物である。
 この時は、危険性に配慮してすぐに除去したが、その後もチップ埋め込み実験を重ねている。チップを神経に接続してコミュニケーションや機器のコントロールを行う ための実験だ。2002年には、妻と2人でそれぞれの体内にチップを埋め込み、感覚的なコミュニケーションをとることにも成功したという。チップの小型化も進み、現在、 腕のなかにRFIDでネットワークに接続できるチップを入れたまま生活している。
 ワーウィック教授が理想とするのは、「思考することでコンピューターに命令を発し」、同じようにネットに接続した人間と「思考で会話できる」未来だ。「そう なれば、無限のナレッジデータベースへの接続も可能になる」という。

体内埋め込みチップにゴーサイン
 だが、こうして直接、ネットワークと接続された人間には、ウイルスやハッキングといった攻撃を受ける可能性が出てくる。先の「攻殻機動隊」に登場する「電脳」は、 素晴らしい能力を持っているが、同時に、外部から頭の中をハッキングされたり、電脳ウイルスに感染する。知覚まで乗っ取られ、実在しない敵と戦っているようにコン トロールを受けることさえある。
 このお話では、捜査官の脳をネットワーク化したが、現実に実用化が近づいているのは、とくに身体障害者のコミュニケーションや動作を支援するものだ。ベンチャーの 米サイバー・キネティックスは今春、米食品医薬品局(FDA)から、脳にチップを取り付けてコンピューターに信号を送る臨床実験の承認を受けた。まひで体の筋肉が 動かせない患者の頭蓋骨の下に、4ミリ角のチップを埋め込んで思考でコンピューターをコントロールするものだ。体も動かせず、言葉も出せない人にとって、福音と なりうるもので、同社は数年後の商品化を目指している。こうした方法は、他にもいくつもの大学や企業が研究に取り組んでいる。
 このうち、米アプライド・デジタルは一足早く、実用化にこぎつけた。2004年10月、医療目的での体内埋め込みチップの使用について初めてFDAの認可を受けた。同社は 「ベリチップ」と呼ぶ体内埋め込みチップを販売しており、何年もFDAの申請を行ってきた。認可を受けたのは、複雑な病歴を持つ人や、処置に特別な配慮が必要な人の 医療情報をチップに書き込んで、常時、体内に持っておくという目的に活用するものだ。脳をネットワーク化するまでにはならないが、まず第一歩を踏み出したことは 間違いない。サイボーグの日は確実に近づいている。
 ちなみにワーウィック教授は、ハッカーに対する態度は、その時大きく違ったものになると考えている。今のところ、ネットワークへの不法侵入は、重犯罪ではない。 しかしいずれ社会は、不正なハッキング行為を厳しくとらえようになるという。

UP:20050718 cf.http://tenshoku.inte.co.jp/msn/news/0282.html

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