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血液

血液製剤/血漿研究


血液製剤
第140回中央社会保険医療協議会総会議事録(ノボセブン薬価引き上げ)
血液/血液製剤に関するリンク集
血漿研究の歴史(高井和江)



  
■ 血液製剤
◇血液製剤
 人の血液から作られた医薬品を総称して血液製剤という。血液製剤には、大別すると全血製剤、血液成分製剤及び血漿分画製剤がある。全血製剤とは、すべての 血液成分(赤血球、血小板、血漿など)を含むものであり、血液成分製剤とは、全血を物理的方法(遠心分離)により血液の各成分に分離したものをいう。血漿分画 製剤とは、血液の血漿成分中に含まれている有用なタンパク質を物理化学的方法により取り出して製剤にしたものである。(p28)
◇血漿分画製剤
 血漿に含まれる100種類以上のタンパク質の中から必要なものだけを物理・化学的に分離精製製剤化したもの。主なものとしては、アルブミン製剤、免疫グロブリン 製剤、血漿凝固因子製剤の3種類があり、その他にも新たな製剤が種々開発されつつある。(p34)
◇全血製剤
 血液の全成分(赤血球、白血球、血小板、血漿)をすべて含む血液製剤。成分製剤に対する言葉。有効期間により新鮮血液と保存血液に区分され、大量出血時に 用いる。保存血液は4〜6℃で保存、有効期間は採血後21日間。(p62)

◇保存血液
 採血後、72時間以上保存した血液製剤。採血後21日以内の輸血用の全血製剤。現在は人全血液と名称が変わっている。4〜6℃で保存され、その容量は228mlまたは 456mlである。(p86)
◇枕元輸血
 医療機関内で供血者から注射器で採血し、そのまま患者に輸血する方法。昭和20年代に盛んに行われていた。供血者は患者の家族・知人のほか、主として業者があっせん する売血者であった。現在では、日赤血液センターで採血・製造された輸血用血液製剤が供給されており、枕元輸血が行われることは少なくなっている。(p87)
◇血清肝炎
 ウイルス性肝炎のうち輸血など非経口的に感染するものをいう。一般に、患者の尿や便の中にはウイルスは存在せず、潜伏期間が60日〜160日位の肝炎。かつてはB型 肝炎が主流であった。(p35)
◇成分輸血
 血液が各成分に分離された成分製剤を用いた輸血。有効な成分のみが輸血できること、患者の循環器系への負担が少ないことなどのメリットがあり、近年、輸血療法の 中心となっている。(p59)

◇薬価基準
 厚生大臣告示によって定められる使用薬剤の購入価格。二つの性格を有する。一つは保険医療で使用できる医薬品の範囲を定めたもので、もう一つは保険医療で 使用した医薬品の請求価格を定めたもの。原則として薬価調査に基づき概ね2年に1回改定される。(p90)

厚生省薬務局企画課血液事業対策室監修 1995『血液事業実務用語集』薬業時報社


  
■ 09/01/14 第140回中央社会保険医療協議会総会議事録

09/01/14 中央社会保険医療協議会 第140回総会議事録
(1)日時  平成21年1月14日(水)10:00〜10:22
(2)場所  厚生労働省専用第18〜20会議室
(3)出席者 遠藤久夫会長 牛丸聡委員 庄司洋子委員 前田雅英委員
      小林剛委員 対馬忠明委員 小島茂委員 勝村久司委員
      北村光一委員(代 今井) 高橋健二委員(代 清水) 松浦稔明委員
      竹嶋康弘委員 藤原淳委員 中川俊男委員 西澤寛俊委員 邉見公雄委員
      渡辺三雄委員 山本信夫委員
      坂本すが専門委員 黒崎紀正専門委員
      <参考人>
      加藤治文薬価算定組織委員長
      <事務局>
      水田保険局長 榮畑審議官 佐藤医療課長 宇都宮医療課企画官 
      磯部薬剤管理官 他
(4)議題  ○医薬品の薬価収載等について
      ○医療機器の保険適用について
      ○その他
(5)議事内容 
○遠藤会長
 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第140回中央社会保険医療協議会総会を開催したいと思います。
 皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 まだ委員のお一人が着席されておりませんけれども、いらっしゃると思われます。
 まず、委員の出欠状況でございますけれども、本日は、小林麻理委員、白石委員、大島専門委員が御欠席でございます。
 また、北村委員の代理で経団連経済第三本部長の今井克一さんが、また、高橋委員の代理で全日本海員組合の清水保さんがお見えになっておられます。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 まず、医薬品の薬価収載等につきまして議題としたいと思います。薬価算定組織の加藤委員長より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○加藤薬価算定組織委員長
 薬価算定組織の委員長を務めております加藤でございます。私のほうから、今回検討いたしました新医薬品の算定結果等について報告させていただきます。
 まず、資料の中医協総−1をごらんください。
 今回報告いたします品目は、資料1ページの一覧表にありますとおり、2成分2品目でございます。これら2品目は、HIV−1感染症を効能・効果とする医薬品で あることから、緊急収載を行うものであります。
 それでは、算定内容について説明いたします。まず最初に、インテレンス錠、資料2ページをごらんください。インテレンス錠は、エトラビリンを有効成分とし、 HIV−1感染症を効能・効果とする内用薬であります。資料3ページをごらんください。薬価算定組織で検討した結果、本剤は効能・効果が類似するデラビルジンメシル 酸塩を最類似薬とした類似薬効比較方式(I)による算定が妥当と判断しました。また、本剤の薬価算定に当たっては、有用性加算(II)及び市場性加算(I)を適用と することが妥当と判断し、その理由を資料に記載してございます。本剤は、治療選択肢が限られている多剤耐性HIV感染患者に対して有効性が認められており、 新たな選択肢となり得るという点で、治療法の改善が認められると判断しました。ただし、患者におけるプロテアーゼ阻害剤に対する耐性の有無と本剤の有効性の関係等に ついて、製造販売後の情報収集が求められていることを考慮して、加算率A=15%を適用することが適当と判断しました。
 また、本剤は希少疾病用医薬品であり、市場性加算(I)の適用は認められると判断しましたが、その加算率については、類似の薬理作用を有する抗HIV薬が既に多く 収載されていることを踏まえ、A=10%を適用することが適当と判断しました。したがいまして、資料2に戻っていただき、本剤の算定薬価は、最類似薬であるレスクリ プター錠200mgとの1日薬価合わせに有用性加算(II)、A=15%及び市場性加算A=10%を適用し、100mg1錠619.80円となりました。
 次に、シーエルセントリ錠について報告をいたしますと、資料の4ページをごらんください。シーエルセントリ錠は、マラビロクを有効成分とし、CCR5指向性HIV −1感染症を効能・効果とする内用薬です。資料5ページをごらんください。
 薬価算定組織で検討した結果、本剤については、既収載品の中に同様の効能・効果、薬理作用などを持つ類似薬がないことから、原価計算方式による算定が妥当と判断 しました。
 営業利益率については加算の理由を資料に記載してございます。本剤は、CCR5阻害作用によるHIVの細胞内侵入を阻害するという新規の作用機序を有しており、 既存の抗HIV薬に治療抵抗性の患者への有効性が海外臨床試験で示されていることから、革新性が認められると判断しました。
 ただし、長期投与におけるCCR5指向性HIV−1の変異による有効性への影響については、市販後の情報収集が求められていることを考慮し、平均的な営業利益率 プラス20%の営業利益率を用いることが適当と判断しました。
 したがいまして、資料4ページに戻っていただいて、本剤の算定薬価は150mg1錠2,278.80円となりました。
 次に、注射用ノボセブンの不採算品再算定について報告いたしますが、資料6ページをごらんください。
 今般、既に薬価収載されている注射用ノボセブンについて、緊急用に不採算品再算定を行いましたので報告いたします。
 注射用ノボセブンは、平成12年5月に薬価収載された遺伝子組み換え活性型の血液凝固第VII因子製剤であり、血液凝固第VIII因子や第IX因子に対して抗体が生じた 血友病患者の出血抑制に使用されている医薬品であります。
 遺伝子組み換え製剤である本剤の製造工程では、細胞培養の過程でウシ由来成分等が使用されていますが、平成15年以降、BSEの対策のため、原材料管理の厳格化が 順次行われてきているところであります。
 この原材料管理の厳格化に伴うコストの負担は、これまで企業努力により吸収されてきたところでありますが、開発途上国を含む他国に比べ日本への出荷価格が低いと いう状況もあり、現時点では不採算となっていることから、現行薬価のままでは、近々供給停止せざるを得ない状況になっております。
 他方、本剤については、関係学会から、他に代替するものがなく、医療上必要不可欠な医薬品であるとして、供給継続にかかわる強い要望が寄せられているところで あります。
 以上により、本件は、平成18年度薬価制度改定で薬価算定基準に盛り込まれた規定であるところの「不採算品再算定の要件に該当する既収載品のうち、安全対策上の 必要性により製造方法の変更等を行ったものであって、当該既収載品の薬価をそのまま適用しては不採算となり、緊急性があるものについては、薬価改定の際に限らず、 当該薬価を改定することができる」というその場合に該当することが判断されたことから、今般、原価計算方式による不採算品再算定を実施し、本剤の薬価を引き上げる ことが妥当と判断しました。
 具体的には、原材料管理の厳格化に伴う本社からの移転価格の上昇相当分について不採算品再算定による引き上げを行った結果、1.2mg製剤の改定薬価が11万 6,501円、4.8mg製剤の改定薬価が43万3,103円となりましたので御報告いたします。
 以上で報告を終わります。

○遠藤会長
 ありがとうございました。
 事務局から何か補足説明が必要でしょうか。お願いします。

○事務局(磯部薬剤管理官)
 特にございません。

○遠藤会長
 ありがとうございます。
 ただいま御報告がありました、類似薬効比較方式と原価計算方式で算定されました2つの医薬品と、それから初めての適用になるんでしょうか、不採算品の再算定の ケースと、以上3件につきまして、何か御質問、御意見ございますでしょうか。
 勝村委員、どうぞ。

○勝村委員
 3つ目のノボセブンについて2点ほど質問なのですけれども、一つは、これはデータを見ますと非常に患者数が少ないので、多分、血友病の患者の中でも、ほかの人が 使っている薬が使えない人がおられて、そういう患者の人にとってはこの薬しかないということかなと思うのですけれども、これは1社がつくっているとのことですが、 海外でもつくっていて、海外でも数は少ないでしょうけれども、不採算になっていないのかなと思うのですが、日本国内の中で見ると不採算だけれども、企業全体では この薬をつくっていくことでどうなのか、海外では幸いにも違う薬価がついているわけで、企業として本当につくり続けていくことが難しいものなのかどうかという、 一応その点をお聞きしたいということと、もう一つは、企業からの申し出の理由と関係学会からの要請などのことについては書かれているのですけれど、こういう血友病と いうような、ある種、希少疾患であれば、患者会みたいなものもあると思うのですけれども、そのあたりとの話し合いとかはされているのか、納得を得られているのか どうかとか、こういう議論をする場合にはそのあたりの情報も、ものごとを決めるときには参考のデータとして欲しいなと思うので、そういう点がどうなのかということと、 質問としてはとりあえずその2点です。

○遠藤会長
 ありがとうございます。それでは、今よろしいですか、質問。それでは、事務局からお願いします。

○事務局(磯部薬剤管理官)
 薬剤管理官でございます。今、2つの御質問をいただきました。最初の質問でございますが、本剤については、日本国のみならず、ほぼ全世界的に供給が同じノボ ノルディスクファーマから供給されているものでございますけれども、私どものほうでは、例えばこの会社が世界的に供給をやめてしまうことを考えているとか、 そういうことは聞いておりませんので、世界的には当然供給を続けていくものというふうに理解をしておりますし、また、ほかの国は日本より相当程度薬価も高いことも ございますので、不採算になっているということは聞いておりません。そういう中で、相対的に日本国の薬価がほかの国に比べて非常に低いということから、日本国で 不採算になっているので、日本国に対する供給のみをとめるというお話が出ているわけでございまして、世界的には供給は続けていくものというふうに理解をしております。 それが1点目でございます。
 2点目でございますけれども、原価計算の場合に個々のどういう部分のコストがどうなのかということについて、なかなか企業機密に属する部分が非常に多いことも ございまして、今回のケースにつきましては、患者会の意見を特に聞いていることはございません。

○遠藤会長
 ありがとうございます。勝村委員、どうぞ。

○勝村委員
 例えば、このケースの場合、薬価を上げるという方法以外の方法も、あり得るかもしれないと思うのですね、日本としてこの人たちに供給を続けていくための制度の 工夫などの方法で。そのあたりで患者会のほうから何か厚生労働省に対して要望が出ているとか、そういうことはないのですか。

○事務局(磯部薬剤管理官)
 患者会から私どものほうに寄せられている要望は特にございません。今回の場合につきましては、確かに勝村委員がおっしゃるように、いろいろなケースがあろうかと 思います。実際に例えば製造上の問題で供給ができなくなるようなケースも当然あり得るでしょうから、ただ、今回のケースについては、あくまで出荷価格が日本だけ 非常に安く、抑えられているということから、薬価の問題で供給を停止せざるを得ないという企業側の強い意見がございましたので、薬価の引き上げをしない以上は供給が とまるということから、薬価の引き上げに至ったものでございます。

○遠藤会長
 勝村委員、どうぞ。

○勝村委員
 少し前に、そういう同じような理由で薬価を上げたけれども、患者会がそれを十分周知していなくてびっくりをして、結局、また薬価を下げたというようなケースも あったかと思うのですけれども。今回のケースでは、特に要望は出ていないということですけれども、患者会の人たちにこのたび薬価を上げる予定であると伝えてあると いうことでしょうか。海外と比べたら安いといっても、患者からすれば高い値段がさらに1.5倍近く上がるということになりますが、そのあたりのことは患者会の人 たちには伝えてあるけれども、特に要望はないという理解でいいのでしょうか。

○遠藤会長
 事務局、お願いします。

○事務局(磯部薬剤管理官)
 このような供給停止のケースについてどういう手続をとっているかということを若干補足させていただきますと、企業のほうから供給停止をしたいという話があった ときには、関係の学会、ですから多くが医療関係者というか、医師の方になろうかと思いますが、その方々の御意見を伺うようにしております。その医療関係者の方々の 御意見としてどうしてもこれは必要不可欠であると、薬価引き上げもやむを得なしということの御意見があった場合について、引き上げをするということにしておりまして、 直接このような場合に患者のほうからの御意見を聞くようなケースは通常ありません。
 勝村委員がおっしゃっているのは治療用ミルクの件の反省としてそういうことを考えるべきでないかと、こういう意見だと思っておりますが、その際には、我々としては 不採算再算定をやったわけでございますけれども、一度に何倍の薬価になってしまうと、計算上なってしまったということが患者負担の大幅な増加につながって、大きな 問題になったということでございます。そういうことも、我々、不採算品再算定する場合には十分考えなければいけない視点だというふうに私ども十分認識をして おりまして、今回のケースにいては、企業のほうはもっと高い価格にしてほしいと、こういう意見もあったところでございますけれども、激変を緩和するという意味も ございまして、今回見ていただきますと、あくまで移転価格の上昇相当分の引き上げにとどめたということで、40%程度の引き上げにおさめているところでござい ます。
 そういうことで、あともう一つこのケースで違いますのは、血友病患者ということもございまして、特に先天性の血友病患者につきましては、公費負担で患者負担が 減じられていますので、学会のほうには、患者さんの負担のほうはどうかということもお聞きをしておりますけれども、そういった問題はまず起こらないだろうと、 そういったこともお聞きをした上で今回の不採算算定に至っているものでございます。

○遠藤会長
 ありがとうございます。勝村委員、どうぞ。

○勝村委員
 そういうふうに、患者の立場に立って努力もしていただいているということで、それは結構だと思うのですけれども、こういうケースというのは今回初めてじゃないかと いうことなのですけれども、これからも、そんなに数はないと思いますので、こういう場で議論する際にやはりある程度限られた少ない人数の患者さんの会であるケースが 多いわけなので、その人たちとも一定協議をし合っているという形を今後とっていただいて、その旨も資料に記していただいた上で議論ができるように今後お願いが できたらなと思います。

○遠藤会長
 大変重要な御指摘だと思います。事務局のほうとしても検討していただきたいと思います。
 ほかにございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは、本件につきましては、中医協として承認するということでよろしいでしょうか。

             〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○遠藤会長
 ありがとうございます。それでは、中医協として承認したいと思います。
 加藤委員長におかれましては、長時間どうもありがとうございました。

(加藤薬価算定組織委員長退席)

○遠藤会長
 次に、医療機器の保険適用についてを議題といたしたいと思います。
 医療区分A2(特定包括)及びBの個別評価について、事務局から報告していただきたいと思います。お願いします。

○事務局(宇都宮医療課企画官)
 医療課企画官でございます。資料、中医協総−2をごらんいただきたいと思います。本年1月1日より保険適用が開始されておるものでございます。
 まず1ページ目でございますが、医科の区分A2(特定包括)(特定の診療報酬項目において包括的に評価されている区分)ということで、ごらんのとおり27件 ございます。
 続きまして、次のページ、2ページ目でございますが、区分B(個別評価)(材料価格として個別に評価されている部分)ということで、ごらんのとおり24件で ございます。
 以上、医科につきましては合計51件ということです。
 続いて、3ページでございますが、歯科でございます。歯科につきましては、区分のA2は今回ございません。区分Bのみでございますが、こちらに一覧として 出ております15件ということで、歯科については合計15件ということでございます。
 以上、医科、歯科合わせまして66件ということでございます。
 以上でございます。

○遠藤会長
 ありがとうございます。何か特別な説明が必要なような案件はございますか。

○事務局(宇都宮医療課企画官)
 特にございません。

○遠藤会長
 それでは、ルールどおり行った結果、このような形で評価したということでありますけれども、何か御質問、御意見ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは、ただいま報告があったとおり承認したいというふうに思います。
 それでは、本日の総会は、一応議題としては以上2件でございますけれども、これにて閉会したいと思います。
 次回の日程等につきまして事務局から何かありますでしょうか。

○事務局(佐藤医療課長)
 未定ですが、決定次第早急に連絡をさせていただきます。よろしくお願いします。

○遠藤会長
 それでは、本日の総会、これにて閉会したいと思います。どうもありがとうございました。

    【照会先】
      厚生労働省保険局医療課企画法令第1係
      代表 03−5253−1111(内線3288)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/txt/s0114-4.txt
◇厚生労働省:第140回中央社会保険医療協議会総会資料
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/s0114-7.html


  
■ 解説
e-血液.com
ZLB Behring社のサイト。血液について分かりやすい解説をしています。

■ 行政
血液事業の情報ページ
厚生労働省医薬局血液対策課による血液事業のページです。厚生労働省とリンク。
血液製剤調査機構
国内献血による血液由来製剤の適正な製造や供給のための内外の情報収集など。
献血推進情報
献血から血液製剤ができるまでの流れの解説など、献血に関する情報。
厚生労働省ホームページ
厚生労働政策の情報は、やはりここ。

■ 学会
日本血栓止血学会ホームページ
サイト内の用語集が充実しています。
日本小児血液・がん学会
サイト内に止血・血栓委員会があります。
日本輸血学会
「安全な輸血用輸血の確保のための適正輸血の推進、献血制度の充実について」(pdf) の声明があります。


  
◇11 血漿研究の歴史 高井和江
 血漿−血球と血小板を浮遊させ全身くまなく運搬する複雑な水溶液−は、血液の容積の50〜70%を占めるにもかかわらず、その真の重要性は最近まで十分認識されて いなかった。血漿の研究は医学の歴史の中でも比較的遅れて発展した分野である。
■ 血液と循環系
 古代より血液は「生命の源」とみなされ、心臓の拍動停止が死を意味することはよく知られていた。1628年にウィリアム・ハーベイ(William Harvey)は、心臓の拍動に よって駆出された血液は動脈系を通って全身にめぐり、静脈系に集まって心臓に戻る、というダイナミックな血液の循環について初めて記載した。しかし血液が実際にどの ようにして動脈系から静脈系に流れるかは、1660年顕微鏡学者マルセロ・マルピギー(Marcello Malpighi)の詳細な観察によって毛細血管が発見されて初めて明らかに された。
 19世紀には浸透圧、電解質、溶液の性質といった化学的研究が進み、腎臓をはじめ内臓の複雑な機能や仕組みを研究する生理学の発展の基礎となり、循環系の主要な役割 も明らかにされた。すなわち、生体に必須の酸素や栄養素を組織細胞に運搬し、細胞活動から生ずる二酸化炭素や老廃物を肺および腎臓へ送る。これらの物質交換は、薄い 毛細血管壁を介して循環血漿と組織の間質液(リンパ液)との間で行われる。1896年英国の生理学者アーネスト・スターリング(Ernest H. Starling)は、循環系の容量と 圧力を一定に維持するために、血漿蛋白による浸透圧が重要であることを示唆した。
■ 第二次世界大戦と血漿分画計画
 戦争は常に医学に大きな影響を与えてきた。戦傷の主要な特徴の一つは、失血と損傷組織からの血漿の滲出である。このため酸素と栄養素を運ぶ血流が減少し、循環不全 ―外傷性ショックを引き起こす。1920年代には抗凝固剤の導入や遠心器の発明により輸血や血漿分離が可能となり、第二次世界大戦では戦地で大量の血漿輸注が行われた。 しかし血漿は細菌に汚染されやすく、長期保存は困難であり、この解決法として研究されたのが、凍結乾燥血漿であり、抗ショック作用に有効な蛋白の分離であった。
 この国家的な血漿分画計画の責任者となったのが、ハーバード蛋白研究所のエドウィン・コーン(Edwin J. Cohn)であった。コーンは、化学的な条件−イオン強度、pH、 温度など−を少しずつ変えて特定の蛋白が沈殿しやすい条件にして、エチルアルコールを加える作業を数回連続で行った。原油を分留して石油やガス、その他の産物を取り 出す作業にそっくりなこのプロセスは「分画」と呼ばれるようになった(図参照)。
 チゼリウス(Tiselius)による電気泳動法の導入、スウェドベリ(Svedberg)やペダーセン(Pedersen)による超遠心法の発達により、各分画の蛋白の純度や分子の性状 が明らかにされた。また免疫電気泳動法やローレル(Laurell)の交差免疫電気泳動法を用いることにより、分離した個々の蛋白の同定や定量が行われた。コーンが注目した のはアルブミン分画であった。アルブミンは極めて安定な蛋白で熱変性に強く、浸透圧効果が高く、乾燥血漿に比べると1/5の容積で同等の抗ショック作用が得られる。アル ブミンが初めて本格的に使用され、その著しい効果が確認されたのは、1941年12月真珠湾攻撃による負傷者においてであった。
■ 血液成分療法へ
 血漿分画計画により、血液成分療法への道が開かれた。特殊な蛋白を精製し、安定な形で保存し、欠乏した成分とその機能を回復するために、必要なときにより純粋で 力価の高い形で投与する。
 コーン分画IIおよびIIIは精製されて、主要抗体を高濃度に含むγグロブリンと凝固研究に用いられるプロトロンビンが分離された。ガンマグロブリンは麻疹感染の危険の 高い子供たちや、流行性肝炎(A型肝炎)の危険にさらされた人たちに投与され、発症予防や軽症化に有効であることが証明された。
 コーン分画Iのフィブリノゲンは重症肝疾患、先天性無フィブリノゲン血症などにおいて、フィブリノゲンの補充の目的で使用されたが、投与後血清肝炎が高頻度にみら れた。分画Iには抗血友病因子も見出されたが、1965年には、新鮮凍結血漿を4℃で解凍すると第VIII因子を高濃度に含む残留物(クリオプレシピテート)ができることが 発見された。1970年代にはさらに第VIII因子凝固活性を高めた乾燥濃縮第VIII因子製剤が開発され、血友病治療の主流となった。しかし血液製剤により非常に多くの患者 がC型肝炎ウイルスに感染し、さらに1982年に初めて発見されたHIV感染が血友病患者に大きな不幸をもたらすこととなった。これらの犠牲の上に、より安全な血液製剤と して、加熱処理濃縮製剤や遺伝子組換え製剤が開発され、現在に至っている。
■ おわりに
 現在、多くの疾患の診断や病態解析が血漿あるいは血清に含まれる蛋白質、酵素活性、電解質、脂質、ホルモンなどの測定によってなされており、血漿は様々な機能を もつ無数の成分の運搬液であるとともに、たった1滴で無限の情報を提供する。発癌や疾病に関与する遺伝子産物や複雑な生体反応(炎症、免疫、造血など)を調節する 因子など、微量の物質の存在を想定し、実証しようとする研究者の熱意と、それを可能にする感度の高い検出系の開発により次々と新しい物質が発見されてきた。血漿研究 は医学や科学の発展とともに無限に発展する可能性を秘めている。

■ 文献
1)Cohn EJ : The separation of blood into fractions of therapeutic value. Ann Intern Med, 26: 341-352, 1947.
2)Starr D: 血液の物語(山下篤子訳),p476,河出書房新社,東京,1999.
3)Wintrobe MM : 血液学の源流II(柴田昭監訳),pp553-576,西村書店,新潟,1982.

平井久丸・押味和夫・坂田洋一編 2004『血液の事典』朝倉書院 pp22−24

作成:北村健太郎
UP:20050925 REV:20090613
血友病関連年表  ◇「神聖な義務」  ◇「錆びた炎」  ◇「ブラックジャック」  ◇浦高事件  ◇小児慢性特定疾患治療研究事業  ◇掲示板

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